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 エッセイ 小さな交流                  ANVスタッフ

  旭区のボランティア活動に加わって日本語を教えています。中国、カンボジア、タイ、マレーシアなど東南アジアを中心に、いろいろな国から来た人たちがいます。日本人と結婚した人、転勤した夫に随いて来た女性、難民として定住した親族に呼ばれてきた人、あるいは亡命者など様々な事情で日本に来た人たちです。ほとんどの人にとって、日本語を学習するのはまったく始めてです。そんな人たちにテキストを持たせて平仮名、カタカナ(そして漢字)を読ませ、発音させ、書かせる…。

 実は、家庭教師を含めて「先生」業はやったことがありません。暇はあるし、日常的に使っている日本語を教えることなら出来るかも知れないと思って飛び込んだボランティア活動ですが、日本語の特異性に改めて気付かされる毎日です。

 

 日本語は外国人には難しいようです。先ず、覚えるべき文字が多すぎます。英語では文字はアルファベットの26文字ですが、日本語では平仮名とカタカナだけで 100余文字、これに常用漢字が 2,100余あり、その音訓は実に 4,400に及びます。(我々日本人だって全部を読み書きできないでしょう。)

 次に日本語は約束事(文法)が複雑です。例えば「助詞」、俗に言う「て、に、を、は」の使い分け。「カメラを買いたい」と「カメラが欲しい」とでは使う助詞が違います。また日本語では「行った」(普通体)と「行きました」(丁寧体)のように相手によって言葉遣い(書き方)を変えなければなりませんし、そこに尊敬語や謙譲語、丁寧語が加わって…まさに日本語は「精緻」と「曖昧」が複合した言語です。

 さらに、高と低しかないアクセント。また、「スーパー」(長音)、「きって」(促音)、「きょう」(拗音)など一文字一拍と言っても、なかなか随いて来られないようです。

 

  それでも、彼らの「日本語を覚えたい」「喋れるようになりたい」との意欲と熱意には何とも頭が下がります。クラスは日本語のレベルを見ながら編成されますが、二ヶ月もすると苦手なカタカナも書けるようになり、間もなく『先生は昨日何をしましたか』などと精一杯の日本語で質問をしてくれるようになります。こうなるといよいよ「会話」が始められます。(これがこの教室の目的なのです!)『コップとカップとはどう違うのか』といった質問が出るようになると教える方も楽しくなり、嬉しくなります。そんなやり取りの中で互いの考え方、国の習慣・文化の交換が行われています。今の私の楽しみは、日本語を覚えた生徒たちと互いの歴史観を交換し合うことです。

 日本語教室に来ている生徒たちが、言葉を介して彼らの文化を日本に紹介し持ち込んでくれて、また日本語の文化を彼らの国に持ち帰ってくれる…小さいけれど確かな国際交流ではないでしょうか。

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